ビオラ、すずらん、年下の君
「で、いざ出発。
お兄ちゃん、割と運転はうまかったんだけど道に疎くてさ。
カーナビあったのにも関わらず、山道で迷っちゃったわけ。結構な山ン中で小一時間迷走して、だんだん雲行き怪しくなるし。腹は減ってくるし。
『大丈夫。すぐ抜けれるさー』とか最初はお気楽にしてたんだけど、どんどん道狭くなってくるし、魔界に入っちまったのかよって思い始めて、2人して眉間に皺寄せてて。
そんな時だよ、そいつが現れたの。
砂利道の3メートルぐらい先の道の真ん中になんかいるの。
『狐かあ?』
って叫んで急ブレーキ。
俺もクマのヌイグルミでもおちているのかと思ったんだけど、よく見たら犬だったんだ。薄汚れたポメラニアンが つぶらな瞳でこっちを見てる。
まん丸でタレ目なカワイイやつ。
『なんだ、可哀想だなあ。迷子かそれとも捨てられたのかな』
『こんな山の中だから捨てられたのかもしれないな…聡太、さっき買ったサンドウイッチやれよ』
じゃあってんで、俺がコンビニのビニール袋片手に車から降りた…途端にだよ!」
聡太君の口調がいきなり変わり、噛み付くみたいになる。
不覚にも私はビクッと肩を震わせてしまった。