おとなりバンパイア
え、と思った瞬間、首に二本の尖ったものが押し当てられたのがわかった。
それはまるで、牙のような…
熱い吐息が首にかかって、あたしは確信した。
これ、バンパイアが血吸う前によくやる…
「あ、あぁっの、かかか、魁様…っ?」
「あ?」
「くくく、首、に!」
「これでわかったか?」
「わわっかりましたので、歯!牙!」
すっ、と案外簡単に引っ込めてくれて、ほっと胸を撫で下ろした。
「ホント…なんですね?」
「最初からみんな本気だっつの。まぁでも…」
「?」
魁くんがごまかした部分を、真さんが補おうと口を開く。
「完璧なバンパイアってわけでもないんだ。ある条件がそろったとき、その人は本物になるだろう、って」
「ある条件?」
「まぁそれはのちのち」
その先が気になるのに、ニコリと微笑む真さんは教えてくれる気がなさそう。
「でも、なんであたしにそんな…大事なことを?」
「…お隣さん、だしね」
真さんの微かな含み笑いに、あたしは首をかしげるしかなかった。
「それと…あぁ、まぁ、これもいいや」
「真さん、秘密が多すぎます」
「明日になればわかるよ。じゃあ、今日はこれを話しに来ただけだから、そろそろ帰るね」
「あ、わかりました」
そのあとお邪魔しました、と帰っていく四人を見て、あたしは心底不思議な気分になったのだった。