おとなりバンパイア
「橘さんはこの二人とお知り合いなんですか?」
ゆるっと新谷先生に聞かれ、隣の家なんです、と答えた。
クラス中も「?」な顔してたから「隣の家」ということで大体の事情察してくれるとありがたい。
「じゃあ3人とも席について、HR始めますよ」
「はーい」
あたしだけが返事をして、各自席につく。
ただしなぜか女子の視線が痛い。
魁く…、魁があたしのことなんか呼ぶからいけないんだ!
どーするのさ、漫画のように女子に囲まれてリンチされたら!
絶対助けに来ないでしょアイツ!
と、あたしが怒ってる間にHRは終わった。
そこからがやばかった。
クラスの女子のほとんどが黒崎兄弟に群がったのだ。
きゃあきゃあと言う女子の中心で揺れる金髪頭。
ん?あれ?ひとつしか頭見えなくない?
「カノン」
「うひゃっ!?」
背後から声がして振り返ってみれば、浮かない顔の金髪が一人。
あの女子の集団から抜け出すなんてすごいなこの人。
っていうか、初めて声聞いた。
ちょっと小さいけど、魁より少し高めの大人しい声だ。
「ら、来くん?」
「…来でいいから」
「ら、来、どしたの?」
「…」
えぇっ、何で黙るのっ。