悪い子
悪い子
深夜1時。
母親も父親も弟も寝静まった頃、
私はそっと家から抜け出す。
家の扉を締めれば、ご近所で評判の『真面目で素直で愛想のいい私』とはサヨナラをする。
肌寒いのを我慢して、
パジャマ姿で向かうのはあなたのもと。
あなたは、タバコの煙をくゆらせ
暖房のきいた車のドアを開けてくれる。
「お前が、清純で真面目な女子高生だってこと、忘れそうになるよ。」
あなたは時々そうつぶやくけど
それは、そうに決まってる。
だって、私は、あなたの前では
悪い子。
ただのキスねだる女だもの。
「まぁ、それがいいんだけど。」
あなたの吐息が、手が、私に触れる。
抱きしめられるぬくもりに
生きてることを感じる。
暗がりの中で呼吸を荒くする2人に
気づく人はいない。
2人だけの世界。
「お前、ほんとに悪い子だな。」
それは、全部、全部、あなたのせい。