【短】あたしを姫と呼ばないで!?

ドンドン! と鳴り響く部屋のドアを叩く音と部屋の前で女の子がなにか叫んでいる声をBGMに、んー、と二人で頭を悩ませれば



「俺としては本命にだけあげればいいんじゃないかな? って思うけどね」



困ったようにコノハは微笑んで答えた。


けれどもあたしは首を振って否定する。


最悪な展開にならないような、もっと最善の答えを見つけたかったから。



「あたしも最初はそう思ったよ?
 でもね、そうしたら貰えなかった人が暴れそうで……」


「そんなことないと思うけど……
 流石に信用なさすぎない?」



しかし、コノハの言葉にハッとした。


あたしは彼らを信用してなかったんだ……って。


いくらなんでも高校生になったのだから、思慮分別がついている歳だろう。


彼らだってチョコを貰えなかったからって癇癪は起こさない……はずだ。


言いきれはしないけれど少しは信用してみたいと本命の彼だけに渡そうと決めた。



そうと決まれば、彼の元へとさっそく行こうと椅子から立ち上がる。



「……んー、そう、だよね。
 なら、彼にだけ渡すことにするよ!
 相談にのってくれてありがとう!
 あたしはもう行くね」


「どこに!?」


「……えっ?
 どこって言われても……その本命の彼に渡しに行くんだけど……?」


「はいっ!?
 本命って俺じゃないの!?」


「待って待って!!
 もしかしてコノハもそっち側!?」



否定の言葉を期待した。


しかし、現実は相変わらず残酷だ。



「そうだよ……って言ったらことりはどうする?」



ニコリと微笑むコノハにこれ以上ない恐怖を感じた。



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