【短】あたしを姫と呼ばないで!?

そして事態はさらに混乱を極める。


あたしの目の前で双子が土下座をしている、なんて最悪な光景の中



「やっほーい!
 元気してるかっ!
 皆の衆!」


「うるさい。
 あほヒナタ」



チョコを両手に抱えて満面の笑みのヒナタ先輩と、反対に疲れきった死んだ目のカケル先輩が登場。


あ……なんて嫌な予感とともにギ、ギ、ギ、と二人を見れば 呆れたような表情であたしたちを見ていた。



待って! あたしは巻き込まれただけなんです!


なんて言う間もなくカケル先輩の冷たい視線があたしを射抜く。



「……一応聞くが何しているんだ?」


「チョコをねだられていただけです!
 あたしにはそんな趣味もナニもありませんから!!」


「俺もそんなことは聞いていない……」



ため息を吐くとともにカケル先輩は頭を抱えた。


まるで私が悪い、みたいな感じだけれど絶対違う。



「ちょっと双子!?
 この展開どうにかしてよ!」


「「姫が原因じゃないのー」」


「んなわけあるか!」


「「なら、僕たちが悪いって言うわけー?」」


「仲良く口を揃えないで!」



プリプリと双子に怒るあたしに、今まで黙っていたヒナタ先輩が首を傾げながら尋ねてきた。



……うん、黙っている姿はカッコいいんだよね〜


それは認める!


けど、それは口を開くまでの話で──



「……つまり土下座をすれば姫からチョコを貰えるってことか?
 ならば、オレもするぞ!」


「今はその観察眼はいらなかったかな!?」



なにもこの状況の経緯なんて伝えていないというのに、すぐに状況把握出来たことは純粋におどろくし、尊敬もしてしまう。


けれども、こんなくだらないことでその能力を発揮していただかないでほしい。


そして双子も双子で、ヒナタ先輩を巻き込ませるのはやめていただけないかな???



「そうだよー。会長もすればー?」


「もしかしたら姫からチョコ貰えるかもよ?」


「リクもカイも嘘はつかないで!?」


「そうなのだな!
 姫!
 オレにもチョコをください!」


「うわぁぁぁぁ!!!
 ヒナタ先輩も本当に土下座なんてしないでください!!!」



あれよあれよという間にあたしの目の前には三人のイケメンの土下座姿の出来上がり。


唯一の救いはカケル先輩が冷めた目であたしたちを見ていること。


……うん、コレが唯一の救いって本当におかしい。



「カ、カケル先輩はこんなバカなことをしません、よね……?」


「ちなみに聞くが、俺が土下座をすると思うか?」


「いえいえ!
 そんなふうには見えませんので安心してください!」



ジトリとした目で言うカケル先輩にあたしは必死に首を振って否定した。

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