君の隣でクリスマスを祝う
 ふと、リビングの隅にある丸椅子の上に、新しい本が乱雑に積み上げられているのが目についた。

 ひよっとして、何か新作のアイデアがあるのだろうか? 才能豊かな彼のことだ。こちらから言うまでもなく、次作の準備に取り掛かっていたのかも。
 編集長の求めにろくに応じなかったのは、構想に没頭するあまり、だったのかもしれない。

「先生、あれは小説の資料か何かですか?」

 私の視線を追って、後方を振り返った日向が一瞬たじろいだ気がした。

「……いや。あれは、そういうわけではなく」

 彼にしては珍しく、言葉を濁す。積み上げられた本のタイトルをよく見て見ると、気象関係の本のようだった。

「なんか……意外、ですね」
 
「そうですかね……」

 私は再び、日向と向き合った。すると今度は、彼の方が視線を逸らしてしまう。

 そして何かを誤魔化すかの様に、日向は眼鏡の位置を正した。

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