君の隣でクリスマスを祝う
「目を開けて」

「わっ……」

 連れてこられたのは、彼のマンションの真下の銀杏並木だった。

 葉が色づくのはまだ先だと思っていたのに、こんもりとした黄色の屋根が延々と続いている。

「どうして? この前はまだ青々としていたのに。先生は本当に魔法使いなんですか?」

 興奮した私がそう言うと、日向は愉快で堪らないといったふうに笑い声を上げた。

 眼鏡の奥の瞳は、常日頃の冷たさなど微塵も感じさせない。私は彼が破顔したのを初めて見た。

「必死に分析したんです。貴女にこれを見せたくて」

 言葉の意味を計りかね、私が首を傾げると、彼は私を優しく見つめたまま詳しく話し始めた。

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