君の隣でクリスマスを祝う
「ここは豪雪地帯だから、冬が来たら半年近くはこうなるんです」

 トンネルを抜けると……なんて、まるで昔読んだ小説のようだ。これまで、雪国に縁のなかった私には、初めて見る光景だった。


 途中、見覚えのある場所を通り過ぎた。

 一面雪に覆われた、誰もいない漁港。これまでこの街を訪れたことなどないのに、何故……。

「……あ」

 不意に脳裏に甦る。それは、日向の寝室にある写真と同じ風景だった。

「気がつきましたか」

「寝室の?」

「そう。ここは僕が育った街なんです」

「……そうなんですか」

 彼が自身のことを話してくれた。そのことに、喜びが込み上げる。

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