君の隣でクリスマスを祝う
「ここで先生は生まれ育ったんですね」

 それには何も返さず、日向は前を見つめたまま薄く微笑んだ。

 クリスマスイブの夜、日向は私を自分の故郷に連れて来てくれた。

 その意味を考えて、重ねた両手を胸にあてた。鼓動が早さを増す。

 熱くなったのを誤魔化すように、両手を頬にあて、窓の向こうに広がる雪の壁を見つめていた。


「見えました」

 日向に肩を叩かれ、彼が指した方を見上げると、坂道を登った先、雪で覆われた小高い丘の上に、教会の十字架が見えた。

「教会ですか」

「そうです。あなたも、今からサンタクロースになるんですよ」


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