君の隣でクリスマスを祝う
「はじめまして、日向です」

 名前とこれまで出版した作品の内容から、日向はてっきり女性なのだと思い込んでいた。

 しかしこの日、私の目の前に現れたのは、まだ年若い男だった。

 銀縁の眼鏡をかけ、その奥に酷薄そうな切れ長の瞳。異様なほど整った顔立ちだが、ふとした表情から、繊細さと紙一重の神経質さをちらりと覗かせる。
 背の高いこの男こそが、人気作家『日向 薫』の正体だった。


「木崎さん?」

「……あっ、すみません」

 呆気に取られ、固まる私に日向は薄く微笑んだ。

「編集長から、よく気の利く仕事のできる方だと伺ってます。これからよろしくお願いします」

「はい。よろしくお願いいたします……」

 その正体に最初こそ驚いたが、礼儀正しく深々と頭を下げる日向の様子に、私は好印象を抱いた。


 でも、やはり私は自分の直感を信じるべきだったのだ。
 私は、まんまと彼に騙された。


 日向は仕事に厳しく、絶対に妥協をしない。素晴らしいことではあるのだが、日向の完璧主義につき合うために、私の毎日は徐々に彼を中心に回りはじめた。

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