君の隣でクリスマスを祝う
 日向に導かれるまま教会の裏手に回ると、そこには古い木造の校舎のような建物があった。

 建物の入り口に『慈愛園』と書かれた看板が掛かっている。日向は私の手を離し、インターフォンの赤いボタンを押した。

『……はい。どちら様ですか?』

 女性の訝しげな声が聴こえた。誕生日に日向に贈られた腕時計の針は、夜の10時を指していた。

「先生、ご無沙汰しています。日向です」

『あら! まあ!!』

 それきり、インターフォンが途切れたかと思うと、奥の部屋から年配の女性が現れた。自動ドアの向こうから、日向の隣に立つ私を見て一度口元を両手で覆うと、笑顔でロックを外した。


「いらっしゃい、薫くん。わざわざ来てくれたのね」

「ご無沙汰してすみません。こちらは木崎 翔子さん」

「あの、はじめまして。木崎と申します」

 日向の言葉に慌てて頭を下げると、その女性は私の両手を取り、きゅっと握りしめた。

「いらっしゃい、園長の春日です。来て下さって嬉しいわ。二人とも、どうぞ中へ」

 彼女に促されるまま、私と日向は建物の中へと進んだ。

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