君の隣でクリスマスを祝う
 非常灯だけが灯った薄暗い廊下の壁には、手洗いを促すポスターや、子ども達が描いたと思われる絵、一ヶ月の献立表などが貼られている。

「お茶を用意してくるわ」

 春日さんは私たちに断わると、『食堂』と札がついた部屋へと入っていった。


「先生、ここは?」

 私の問いに、日向は歩みを止めた。食堂前の壁に貼られた一枚の絵を見上げ、私の手を取る。『ぼくのお母さん』とタイトルのついたその絵の中の女性は、なんとなく春日さんに似ているような気がした。

「ここは、児童養護施設です」

「……え?」

「薫くんは、毎年子どもたちにクリスマスプレゼントを送ってくれるのよ。それがまさか、今年は直接来てくれるだなんて」

 いつの間にか、食堂の入り口に立っていた春日さんが、私たちを手招きした。

「こちらへどうぞ。お茶が入ったわ」

「ありがとうございます」

 軽く会釈をして、日向と共に食堂の中へと入った。

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