君の隣でクリスマスを祝う
「そろそろ行きますね。子どもたちが待ってる」

「そうね。ええ」

 春日さんは、ハンカチで濡れた目元を拭うと、穏やかな笑みを浮かべた。

「大騒ぎだったのよ、みんななかなか寝付かなくって。枕元にサンタクロースへのお手紙を置いている子もいるはずよ」

「返事を送ります」

「みんな喜ぶわ」

 日向を見上げる春日さんの眼差しは、彼の全てを包み込むような、慈愛に満ちたものだった。


 食堂の入り口に立ち、私たちを見送る春日さんに会釈をすると、日向は再び私の手を取り、奥の階段を登った。

 二階には子どもたちの部屋があった。日向は持ってきた荷物を一度廊下に置き、一番手前にある部屋のドアを開けた。

 天井の常夜灯が点いているだけで、中は仄暗い。右側の壁にくっつけるようにして、二段ベッドが二基置かれていた。中から静かな寝息が聞こえる。


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