君の隣でクリスマスを祝う
 日向はほぼ一日中机に向かっている。

 モノトーンで纏められた彼の部屋は、執筆用の机と来客用のソファーとテーブル、本棚に資料用の本が並べられているくらいで、とても簡素だ。

 ほとんど何もないその部屋に、私はよく拘束された。

 彼に指示されるまま、執筆に必要な資料をまとめたり、雑多な書類や郵便物のの整理をさせられたり。
 これではまるで、彼の専属の秘書のようだ。


「先生、私はこれで失礼しますね。資料はできてますので」

 与えられた仕事を終え、編集部へ戻ろうと席を立つ。
 私の担当は、もちろん日向だけではない。彼のことだけに構っているわけにはいかないのだ。

「木崎さん」

 彼の表情を覗いたわけではない。でも私には、その声色だけで、彼が機嫌を損ねているのがわかった。

「もう少しいてもらえませんか」

 口調は丁寧だが、彼の声には有無を言わせない何かがある。

「……わかりました」


 日向には独特の圧迫感があり、私は彼のその無言の圧力にまるで逆らえないのだ。

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