泥酔彼女
素直に振る舞う彼女の横に居ると、俺も一緒に心から笑ったり怒ったりできる。
その空気が堪らなく愛しくて心地良い。
そんな彼女を男として可愛いと思い始めたって、おかしくはないだろう。
ただ最近は仲よくなりすぎて、男女の遠慮みたいなものまで無くなってきているのが頭の痛い所だ。
多分俺は、彼女に男として見られていない。
最初はそれでも構わないと思っていたが、どうやらそれは強がりだったようだと、自覚してきている。
合コンに行っただの、学生時代の元彼と会っただの、彼女のそんな話を聞く度に苛立つ自分に気付いたからだ。
俺に対して何でもぶち撒けて愚痴ってくれるのは、正直嬉しい。
だが沢村に男として疾しい気持ちを抱くようになると、少々辛くなってきた。
しかも今日の飲み会で随分荒れる沢村を問い質したら、得意先のあのクソハゲにセクハラされたって云うじゃないか。
乳揉まれたって? 俺だって揉んだ事無いんだぞ!
課長は俺の低気圧に気付いていたのだろうか。
少なくとも、ずっと眉間に深く刻んだ皺には気付いていたのだろう。
俺が彼女を送る旨を申し出ると、妙ににやにやされた。
放っておくと何を仕出かすか分からない沢村を何とか連れ出して、タクシーに押し込む。
彼女の住所なんか、今までのそれとない会話である程度の目星は付いている。番地さえ聞き出せれば簡単だ。