泥酔彼女

彼も酔っているのだろうか。
これはまるで、恋人に与えるキスそのものだ。
でもそれならば、永遠に彼の酔いが醒めなければ良い。


「ん、……つきし、ま、……」

「…!」


長く続くキスから息継ぎを求めて私が小さく彼の名を呼ぶと、彼ははっと息を呑んで唐突に顔を引き上げた。

びっくりした、みたいな表情で私を見下ろしている。
びっくりはこっちだよ!

彼は咄嗟に片手で口許を覆って、私から顔を背けた。

耳先が紅くなっている。多分、その目許も。

そんな顔されたら、私だって連鎖反応を起こす。
かああ、と頬に熱が上ってきて、脳味噌が沸騰しそうだ。

これ、こういう時はどうすればいいんだろう。

まだ彼の感触が生々しく残っている舌が、言葉を失って強張る。

その時、


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