泥酔彼女
「───悪ぃ。俺、帰るわ」
ぽつりと告げた月島が、私の顔も見ずに唐突に立ち上がった。
くるりと踵を返して、広い背をこちらに向ける。
ちょっと待て。フォロー無しか!
らしくないが、彼も多分動揺しているのだろう。
でも今このまま帰したら。
月曜から気まずくて、多分話もできなくなる。
もしかしたら今までの関係だって壊れてしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
私は弾かれたように起き上がり、彼を追った。
玄関で追い付いて追い抜き、ドアの前に立ちはだかり、後ろ手で鍵を掛ける。
この件を何とかするまでこのワンルームに監禁せねば。
突然素早く動いた酔っ払いの思わぬ機動力に驚いたのか、月島は目の前で眸を瞠って私を見下ろしている。
自慢じゃないが、もちろん足はフラフラだ。だが、私だって必死なのだ。