泥酔彼女
魔が差した。それは認める。
だが言うに事欠いてヤリ逃げとは何事だ。
いや、まあ大体合ってる。合ってるけどな!
俺の前に立ちはだかる沢村は、唇をわななかせている。
ついさっきまで、俺はそれに触れていたんだな。
今までどんなに親しくしていても、決して触れられなかったその唇に。
最もやっちゃいけないと思っていた方法で。
ドアを塞がれた俺はその場に佇んで深く息を吐き、片手で額を抑えた。
自己嫌悪が凄い。
今まで我慢していたのは、心地良い関係を壊したくない一心だったのに。
それをあっさり自らの手でぶち壊すような真似をしてしまうとは。
「…だから悪かったって。なんつーか、勢いで」
「勢いって何? 月島はいけると思ったら誰彼かまわずキスして回るの」
「人をキス魔扱いすんな。いくら何でも誰彼かまうわ阿呆」
「じゃあ私はキスしても構わない分類だったの」
「……」