泥酔彼女
そんな殺意を抱いたまま、会社に戻って飲み会に参加したものだから、正直荒れてしまった。
結果として、笑い上戸で泣き上戸、キス魔に脱ぎ魔に絡み酒、あらゆる困った酒癖を発揮する酔っ払いの宝石箱と化した私の面倒を終始見てくれたのが、同期で同僚の月島遥(つきしまはるか)だ。
女子のような名前だが、立派な男性。
身長はゆうに180を超えるだろうすらりとした長身で、涼やかな目許と通った鼻梁を擁する端正な顔立ちは、時折見せてくれる控えめな笑顔を甘やかに見せ、大抵の女子を骨抜きにする。
しかもただのイケメンではなく、彼は優秀だ。
営業部のホープと囁かれ、入社二年目にして次期エースとの呼び声も高い。
そしてそんなハイスペックな彼とあくまで平々凡々な私とは、不思議な事にとても仲が良かった。
同期だからという事を抜きにしても、観たい映画の趣味や食べ物の好みなんかが不思議と一致して、同じ部署という事も相俟って今や親友と云っても過言ではない、気の置けない会話が出来る間柄だ。
彼が素で口を開けば結構な毒舌だって事も、私は知っている。
あと、俺様気質の癖に実はオカン並みに面倒見が良い事も。
「駄目だこいつ。すいません、俺が送って帰りますから」
「悪いが頼むよ、月島。今の沢村を御せるのはお前しか居ない。済まんな」
私は闘牛か暴れ馬か。
私と月島の共通の上司である課長が、無駄に爽やかに手を振って見送ってくれる中、私は月島に半ば背負われるようにしてその場を辞した。