泥酔彼女

幾ら仲が良いと言っても、こんな風に酒で乱れる所を見られたのは初めてだ。
流石に月島もドン引いてるかもしれないな。

顔が見えないから、彼が今何を考えているか分からない。

背負ってくれる広い背中の温もりをじんわりと味わいながら、私は自己嫌悪に陥った。

少なくとも彼が、週末を控えて賑わう繁華街の喧騒を横目に、通りで淡々とタクシーを拾い、私の呂律の回らない言葉を見事に解読して住所を割り出して、車を走らせてくれたのは確かだ。

見栄を張って選んだ女性の一人暮らしにはおあつらえ向きの小洒落たマンションの前で停めてもらい、車を降りたものの私はやっぱり千鳥足。

そういえば月島を家に連れて来るの、初めてなのになあ。
まさかこんな形で呼ぶ事になるとは。


「うーん、月島ぁ、…ごめん、ごめんねえええ」

「はいはい、分かったから悪いと思ったらしっかり歩け。…うわッ」


一緒に車を降りてくれた月島と共に、エントランスを開けてエレベーターのあるロビーに踏み込む。

そこで私はつい安心してしまって、床にへたり込んでしまった。
タクシーでゆっくり座っていた後だから、もう歩くのが億劫だったんだ。


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