泥酔彼女
「おい、沢村。もう少しだから立て。死ぬ気で歩け」
「うーん……」
すんごい眠気が襲ってくる。正直このまま寝落ちしたい。
それが彼にも分かったのだろう、少し焦った様子で肩を揺さ振られるが、私はまるで首の据わらない人形みたいにがくがくするばかりだ。
抱っこして連れてってくれないかなあ。
そうだ、こういう時こそあれだよ、お姫様抱っこだよ。
こんなへべれけの私にも乙女の部分があるのだ。
念願の初お姫様抱っこをこんなイケメンにしてもらえたら、多分この記憶だけで軽くどんぶり飯三杯分は思い出し萌えが出来る。
酔った中で狡猾な計算をした私は、彼へと腕を差し伸べた。
抱っこして連れてって。
できるだけしどけなく見えるように身体をくねらせて。
だが私は忘れていた。
私と月島は確かに仲が良いが、決してロマンティックな間柄ではない事を。
少なくとも彼は、私に対してそんな関係など望んでは居ないだろう事を。
その事を私がとても切なく想っている事も、彼はきっと気付いていない。
従って、酔い潰れた私を運ぶ為に彼が選んだ同期の桜に対する仕打ちは此れだ。