泥酔彼女
屈んだ彼が突然私の脇の下に頭を突っ込んだかと思うと、
「ひぎゃッ!?」
ぐるん、と視界が反転する。
「ぐええええ」
お腹の辺りに彼の肩が食い込み、逆さまの視界に戸惑う私が脚をばた付かせると、その膝裏を手でぐい、と抑えられた。
「暴れるとぱんつ見えるぞ。あと、俺の顔蹴るなよ。蹴ったら死刑な」
低い声で告げられる容赦のない恫喝の言葉。
会社で見せるはにかむような爽やか悩殺スマイルとか、甘くて優しい蜂蜜ボイスとか、何処に置き忘れてきましたか月島くん。
私は大人しく彼の肩の上で項垂れる事になる。
これはお姫様抱っこなんて程遠い体勢だ。
いわゆる、俵担ぎ。
米俵か死体袋宜しく身体を折り曲げて彼の肩の上に担がれた私は、実用重視の運ばれ方でエレベーターに乗り込む事になった。
うん、お姫様抱っこだと両手塞がるもんね…。
エレベーターのボタン押したり、私のバッグも持たないといけないもんね…。
分かっているけど、遠い目になる。
やっぱり私はただのへべれけで、お姫様にはなれなかったよ……。