楓の季節
第1章 新生活

第1話

青い空に桜の淡い色が映える―――そんな季節。
花粉症の人にとってはかなり辛いけど、でもなぜだかちょっと気分が晴れやかになる―――そんな季節。
今年の4月、私、御園生楓は大学生になる。

私は17歳。本来ならば高校3年生の年齢だけど、ちょっと特殊な事情で1年の飛び級をして大学に入学した。

私は、中学校まで普通の学校に通っていた。でも、中学2年の5月に遭ったある事故のせいで、途中退学することになり、そのあとは、どこの中学校に編入することなく、家で勉強を続けることにした。両親も、2人の兄も、なにも言うことなく私が決めたことを応援してくれたし、兄達に至っては、勉強を教えてくれたりもした。
高校に上がる年齢になっても、高校に行きたいとは思わなかった。
でも、高校の卒業資格は持っていた方がいい、ということを言われて、少し迷った末に決めたのが、アメリカにある通信制の高校に入学することだった。
その学校はちょっと変わった学校で、入学手続きをすると、高校3年間で学ばなければいけない内容が書かれたものと、教科書、問題集が送られてくる。それらを終わらせたことを学校に伝え、証拠としてテキストを送ると、一度アメリカにある本校に来て、卒業テストを受けるように言われる。そして、そのテストを合格すると、晴れて卒業できる。

私は、3年分の勉強を2年で終わらせ、高校2年生の9月に高校を卒業した。
卒業した後に、2番目の兄の聖(あきら)に提案されたのは、1年早く大学を受験してみること。
両親は、最初はそんなに焦らなくてもいいと反対していたけれども、私が、あと1年を無駄にしたくない、早めにチャンスがあるなら試したみたい、ということを伝えると、最終的には賛成してくれた。

両親を説得したあとからは、一番上の兄の樹(いつき)と、聖兄(あきにい)による特訓が始まった。
私は、その年の12月に願書を出し、2月に試験を受けた。

そして、4月ーーー私は藤ノ宮学園大学に入学する。
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