楓の季節
私が入学する大学の正式名称は、私立藤ノ宮学園大学といって、中等部、高等部も併設されている。
中等部、高等部といっても、実際に3年・3年で分かれているわけではない。
実際は中等教育学校のような感じで、1年から6年まで学年がある。普通でいう高校1年生が、ここ藤ノ宮では4年生と呼ばれるのだ。
中等部と高等部は、私立の中でもトップレベルの進学校で、中等部に入るための入学試験も難しいが、もっと難しいのが高等部に入るための試験だと言われている。
藤ノ宮学園大学付属高等学校はとても人気が高く、倍率も高い。高等部からの入学は、外部からは10人しかとらないのだが、その10人の枠目掛けて、何百人も殺到してくるのだ。
人気の理由はレベルの高さだけではなく、設備が豪華だったり、カリキュラムが他のところと変わっているのもある。また、通っている生徒にはお金持ちが多く、そのような人たちと知り合いになりたい、という邪念をもって受験する人も少なくないらしい。
中等部から上がってきた人たちも、定期的に行われるテストで良い成績を出さないと、様々な学内イベントへの参加権を失うなどのペナルティが課されるため、安心してたるんでいることができないらしい。
大学は、高等学校と併設されているとはいえ、エスカレーター式ではない。普通に大学入試を経ないと入学できないのだ。さらに、藤ノ宮生のための枠は用意されていないので、外部から受験する人と競争して、上位に食い込まなければならない。とてもシビアだ。
とは言っても、藤ノ宮の高等学校を卒業した人の半数は、その高い学力をもって国立大学を受験する。他にも、海外に留学する人や、他の難関私立大学に進学する人もいるため、実際に藤ノ宮学園大学の入試で落ちた藤ノ宮生はいないという。
「高等学校でちゃんと努力しているから、そんなことは当たり前。むしろ、落ちたら藤ノ宮生じゃない」
なんてことを言う人も多いらしい。
ちなみに、この大学には文学部・法学部・経済学部・商学部・外国語学部・理工学部・医学部・総合人間科学部・国際教養学部の9つの学部がある。
そして、各学部は様々な学科に分かれており、全部で9学部23学科に分かれている。各学科の人数はは一学年50人。大学全体で一学年の人数は1,150人で、全生徒数は4,600人という、とても小ぢんまりとした大学なのである。
しかし、ちょっと特殊な学風と高い語学力、そして抜群の就職率で人気が高い。この大学の特長は少人数制であることによって保たれているため、人気が出てきてキャンパスが広くなっても受け入れ人数が変わることは今の所ないらしい。

私は、この藤ノ宮学園大学を外部生として受験した。
兄2人ともこの大学の出身で、2番目の兄の聖は今も4年生として在学している。
私が受験したのは、国際教養学部。この学部の授業はすべて英語で行われ、教授は全員ネイティブレベルの英語がしゃべることができ、留学もすることができる。特に専門分野は決まっておらず、国際性や異文化などを取り上げながら、学際的な教育を受け、リベラルアーツと言われる教養を学ぶ学部なのである。
この学部の入試方法は、藤ノ宮大学の中でもちょっと特殊で、普通の3教科入試ではない。SATというアメリカのセンター試験のようなテストと、TOEFLという英語力を試すテストを受けて、それらのスコアシート、そして英語で志望理由を述べたエッセイを大学に送る。その書類選考を通った後は、面接試験が行われる。面接試験で合格して、やっと入学できるのである。
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