プリンセスになりませう!?
愛華お嬢様に『行ってらっしゃいませ』という言葉すら出てこず
ただただ、呆然と見送ってしまった。
それくらい頭が真っ白になり動揺をしていた。
冷静になってくると青ざめてくる。
最悪な事態発生に 逃げることも、断ることも出来ない、その上相談する人もいない
隣の部屋には用意されたメイクリストが総絞りの見事な着物を見て
『ビューティフル』と歓喜の声をあげている。
化粧で雰囲気を似せるのはプロフェッショナルの彼らにとってはお手の物には違いないが
中身は全く違う葵が八方美人で高飛車のお嬢様の代わりを務めるのは無理だと思っていても
葵には逃れるという選択権は一つもなかった。
昔からプリンセスの物語は大好きでよく夢を見てきた。
女の子なら誰もが憧れるプリンセス。
葵は呪縛のように九条家に締め付ける祖母から逃げ、
愛華様の私欲なる不理屈な身勝手さ、当たり前のように
扱き使う九条家から救い出してくれる王子様をいつも夢見ていた。
でもそれはあくまでも夢・・・
現実と夢の違いは分かっている。
出来るだろうか、大丈夫だろうか、バレないだろうか?
…はぁ…と絶望なるため息が何度も重苦しくこぼれる。
今から立花葵を封印して九条愛華として過ごす道が始まった。