陽のあたる場所へ
「あ~!うるっさい。コールセンターかって!社長、早く取りに戻らないかなあ」
「しょっちゅう電話の応対に追われてた人だもんね。それにしても、今日に限って何でこんな…」
二人でぼやき合っていると、また事務所の電話が鳴り響く。
溜息をつき、受話器に手を伸ばそうとした光里を制して、沙織は電話を取った。
「はい、向陽出版、編集部、海野でございます」
「…あら、…貴女が海野さん…?」
「はい。…え?…あの…」
「あ、ごめんなさい。私、河西書店の者ですが…」
河西書店?…
沙織は、先程確認したホワイトボードに目をやる。
「あ、今、うちの社長、お宅にお邪魔して…」
「ええ。スマホを会社に忘れたのか、どこかで失くしたのかと、困ってらっしゃって…」
「あぁ、大丈夫です。こちらに忘れたようです。随分あちこちから電話が掛かっていたので、私共も気にしていたところで…」
光里の目を見て頷けば、光里はホッとしたように短く息をして、仕事を再開した。