陽のあたる場所へ
沙織の胸がざわめく。
そんな気持ちを抑えて、彼女に頭を下げ、龍司に向き直りスマホを手渡す。
「社長、何度も鳴っていましたので、何件か着信が入っているかと思います。会社の方にも数件掛かってましたので、後で事務所の方にも電話入れて下さい。まだ誰か残っていると思いますので…」
「あ、あぁ。ありがとう。ご苦労様」
「それでは、私はこれで。失礼致します」
沙織は、龍司と、河西舞子(カワニシ マイコ)と名乗る女性に頭を下げ、背中を向けると出口に向かおうとした。
「海野さん、久留宮いずみさんはお元気?私、大学の同期なんです」
舞子の声が追い掛けて来て、沙織の胸が大きく鼓動を打つ。
いずみの同級生…
書店の名前と同じ苗字…ということは、書店の社長の娘?…
いずみに聞いた話と一致する。
そして、〝 龍司さん 〟という呼び方…
この女性が、いずみが言っていた、社長の恋人?!…
胸の鼓動を悟られないよう、沙織は微笑みを作り、振り返る。
「そうなんですか。はい、元気に頑張ってます」
「そう…。じゃ、宜しく伝えて下さいね」
「はい、それでは」