陽のあたる場所へ
いずみの言う通りだった。
先週、会ったばかりだと聞いてるのに、「元気?」などと…。
私にその存在を知らせて、いずみに伝わるように企んでいるのだろう。
いずみと、ミスと準ミスを張り合ったという話の通り、容姿は上品で華やかな美人だった。
でも、わざわざこんなことを言うなんて…。
穏やかでない気持ちを抑えながら、沙織は、エレベーターホールへと歩いて行った。
「良かったですね。親切な部下の方で。あ、龍司さん、私も、一件電話入れなきゃ。ちょっと失礼しますね」
舞子は席を立ち、店の廊下へと出た。
エレベーターホールの前に、沙織の後ろ姿を見付け、声を掛ける。
「海野さん…」
「あ、は、はい。まだ何かありました?」
沙織は驚いて振り返る。
「ちょっとだけいいかしら?お聞きしておきたい事があるんです」
「は…い…」