陽のあたる場所へ
「そうなの?あの娘、自分が負けるのが悔しくて、出任せ言ったのかしら。バカな娘ねぇ。今回は、どうやったって私の勝ちなのに」
「勝ち負け…ですか?」
「え?」
「同級生だか何だか知りませんけど、どうしてそんなに彼女と張り合わなきゃならないんですか?
…社長を勝ち負けの道具に使わないで下さい。結婚することに決めたんなら…ちゃんと愛してあげて下さい」
終始、微笑みを湛えていた舞子の表情が、焦りと怒りに変わる。
「言われなくったって……ちゃんと愛してるわよ」
エレベーターホールの隅で話していた二人だったが、やや強目の舞子の語気に、エレベーター待ちの人の何人かが、こちらに目を向ける。
「そうですか…なら、いいんです。
今日は打ち合わせじゃなくてデートだったんですね?お邪魔して申し訳ありませんでした」
沙織は、精一杯の笑顔を作り、舞子に頭を下げた。