陽のあたる場所へ
「あら…打ち合わせですよ。結婚式の」
舞子から怒りの表情が消え、勝ち誇ったような余裕な顔に変わると、沙織の目を見て微笑んだ。
…結婚式…
もう、そんなところまで話が進んでるんだ…
沙織は、いきなり打ちのめされたような気分になった。
もう気持ちの上でも、龍司に決別をしなければならない。
この女性が…本当に心から、龍司のことを愛してくれることを、願うしかない。
「そうですか…それはおめでとうございます」
「ありがとう。それじゃこれで」
舞子は言葉とは裏腹の気持ちを隠すように、踵を返すと、龍司の待つ場所へと戻って行った。
沙織は、暫くエレベーターの上下ボタンも押さずに、階数ボタンが切り替わって行く様をただぼんやりと見上げていた。
そのうち見知らぬ人が来て、沙織を一瞥してから、ボタンを押す。
程なくエレベーターが到着し、甲高い音と共に扉が開いて、やっと沙織は我に返り、そこに乗り込んだ。