陽のあたる場所へ


「あら…打ち合わせですよ。結婚式の」

舞子から怒りの表情が消え、勝ち誇ったような余裕な顔に変わると、沙織の目を見て微笑んだ。



…結婚式…
もう、そんなところまで話が進んでるんだ…
沙織は、いきなり打ちのめされたような気分になった。


もう気持ちの上でも、龍司に決別をしなければならない。
この女性が…本当に心から、龍司のことを愛してくれることを、願うしかない。
 

「そうですか…それはおめでとうございます」

「ありがとう。それじゃこれで」

舞子は言葉とは裏腹の気持ちを隠すように、踵を返すと、龍司の待つ場所へと戻って行った。




沙織は、暫くエレベーターの上下ボタンも押さずに、階数ボタンが切り替わって行く様をただぼんやりと見上げていた。

そのうち見知らぬ人が来て、沙織を一瞥してから、ボタンを押す。
程なくエレベーターが到着し、甲高い音と共に扉が開いて、やっと沙織は我に返り、そこに乗り込んだ。
< 122 / 237 >

この作品をシェア

pagetop