陽のあたる場所へ


「ごめん、亮。もう遅いよ。私、本当は、暫くは待ってた。亮が〝やっぱり一緒に来て欲しい〟と言ってくれるのを。往生際が悪いって、自分を責めながらも、待ってしまってたの。
立ち直るのに随分かかったんだからね。
だって、辛い時いつも私を支えてくれた亮が、居ないんだもの。
友達だった亮も、恋人だった亮も、どちらも居なくなっちゃったんだもの」

「ごめん…沙織」

「その後、他の人とも付き合ったけど、ダメだった。もう亮の時ほど、好きになれる人なんて現れないのかな…って思ってた。
でも、彼と出会って、本気で好きになる気持ち、思い出したの。
なのに、全然相手にされてないなんて、バカみたいなんだけど」

「そっか…そんなに惚れてんのか…。もう俺の出る幕はないんだな」

亮は少し上を向いて、目を閉じた。


「さっきね、亮の声が聞こえたの。あの電話、ホントは間違いなんかじゃない」

「え?声?」

「〝沙織、大丈夫か?〟って亮の声が聞こえたの。だから、気付いたら、指が動いてた。
だけど、それは、多分付き合う前の、友達だった頃の亮の声。私の小さな心の変化に気付いて、いつも寄り添ってくれた。
本当に心強かった。
私にとって、その頃の亮は、本当にヒーローだったのかも知れない。でも…」

「あ~~!!わかったよ。やっぱり〝でも〟か…。
落ち込むから、もうそれ以上、言わなくていい」

「ごめんね、亮。本当の気持ち聞かせてくれて嬉しかったよ。ありがとう」
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