陽のあたる場所へ
「行ったよな…初めての旅行で北海道。
沙織、始めは雪祭りの雪像見て感動してたけど、ライトアップの灯りの中で照らされながら降る雪が綺麗だって、上ばかり見てた。さっき、それ思い出してた」
…ああ、それで…街灯の下で待ってたんだ…
愛し合っていた頃の思い出が甦り、時の流れが一瞬止まってしまう。
「ま、さ…雪の降る中でする話でもなかったな。
風邪引くといけないから、帰るか。家まで送ってくよ」
「ありがとう。でも、一人で帰れるから。寒い中、待っててくれたから、私がここで亮を見送る」
「そっか…わかった」
二人は駅の構内まで戻り、改札前に来るまで黙って歩いた。
「じゃ…な。すぐじゃなくていいから、ちゃんと元気になれよ」
「うん…。亮、本当にありがとね」
改札を通り抜け、少し歩いてから振り返って片手を上げた亮に、沙織も笑って手を振り返した。
帰り道、まだ雪は降り続いている。
身体も手足も冷え切っていたが、街灯の下に佇む亮の姿を思い出すと、心の中だけは、とても温かい気持ちになった。