陽のあたる場所へ


「あの…私の仕事のことじゃないなら…え、と…何か嫌なことでも…。
…あ、でも私に相談なんかしたって仕方ないですよね。私に解決なんかできる訳ないし…」

沙織は、電話の向こうの様子を伺いながら、喋り続けたが、返事はなかった。


「社長?…大丈夫…ですか?」

「…ん…」



沙織は、龍司の意図を、自分なりに解釈した。

あの『契約』…

舞子という婚約者がいたのにも関わらず、沙織を求めた理由…。
決して会う時間がないからとか、そういうことではなかった。


恋人や大事な人と結ぶ関係は、愛と癒し。
自分との関係は、何事か、心の中で処理し切れない感情の捌け口。

今、龍司は何かに傷ついている。
苛立っている。
だから…。

それならそれでいい。
求められる理由が存在するのなら、それで…。
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