陽のあたる場所へ
それでも…
自分に何かできることがあるなら…
その辛そうな顔を、一瞬でも和らげることができるのなら…。
沙織は、ただ、悲しみに打ちのめされたような龍司の顔を見ると、いたたまれずに、その冷たい手を取っていた。
「雨宿りだと思って下さい。ただ屋根のある場所で雨宿りするだけのつもりでいいから、寄って行って下さい」
沙織はそう言って龍司の手を引いたが、龍司はまた俯いてしまい、動こうとしなかった。
「風邪引きますよ。ほら」
沙織が龍司の横に来て背中を抱くように立たせると、彼はやっと重い腰を上げた。
身体に力が入っていないような龍司の腰に、そのまま手を回すように支えながら、エレベーターに乗り込むと部屋へ連れて行った。