陽のあたる場所へ
「…一昨日、…母親が死んだ」
…えっ…?じゃこんな所に来てる場合じゃ…
沙織は思わず息を飲む。
「今日の昼間、葬儀も済ませて来た」
「…出張って…それで…。あ、でも会社の人、誰もそんなこと…」
「身内だけで済ませるからと、上の者だけに言っておいたから…」
「そうですか…それは大変でしたね。お母様、お体、悪かったんですか?」
「癌だった…らしい。知らなかった…こんなに悪かったなんて」
「…社長、いつも忙しかったから…。辛かったですね」
「嫌いだったんだ…母親。
だから、病気だとは聞いてたけど、会いにも行かなかった」
嫌いだった…という言葉の裏側で、何故か龍司が〝愛してたのに…〟という表情をしたように、沙織には見えた。
「…あんたと長瀬楓の家に行った時、あったよな。
あれ、いつ頃だっけ…?
もう月日の感覚も全くなくて…。
あの時、珍しく電話があったんだ…
〝たまには顔見せに来て〟って。
何だかいつもより声が弱々しかったような気がしたから、仕方なく顔を見に行ったんだ。
あれが最後だった…」