陽のあたる場所へ



―――20年前―――



俺が10歳の春、母親が再婚した。

本当の父親とは、俺が2歳になる前に離婚したと聞いていた。
だから、顔も覚えていないし、遊んで貰った記憶もなかった。

小学生の男子が、まるで約束事のように野球やサッカーに夢中になる。
俺も同じで、授業後に友達と一緒にやったり、小学生のチームに入ったりもした。

けれど、休日に公園に連れて行って貰い、父親に相手をして貰うという経験は、一度もなかった。
友達の話を聞くと羨ましくて、でも、仕事に忙しい母親に言っても仕方がないので諦めていた。


『新しいお父さんができる』
俺は単純に嬉しくて、お父さんができたら、どうやって遊んで貰おうか…とそんなことばかりを考えていた。


父になる人の家に引っ越しをするので、転校することが決まり、仲の良い友達と離ればなれになるのは、とても寂しかった。
母子家庭で兄弟もいない俺には、友達が何よりの支えで、一緒に何かをする時間が一番楽しかったから…。

「中学や高校生になって、自由に電車に乗って遊びに行けるようになったら、必ずまた会おうな!」

と約束をして、友達と別れた。

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