陽のあたる場所へ
ドアが開き、そのフロアーの社員が数人、話しながら待っていた。
「あ、社長!おはようございます」
龍司に気付くと、声をかけながら乗り込んで来た。
龍司も、それに答える。
彼らは、今から営業に向かうのだろう。
今日向かう取引先の話をし始めた。
エレベーターの中が、数秒前とは全く違う異空間に思えたが、もしかしたら、何もなかったんじゃないかとも思えてしまう。
沙織は、思いもよらない出来事に、放心状態になりながら龍司の顔を見た。
しかし、彼は何事もなかったかのような平然とした表情で、エレベーターが下る階のランプを見上げていた。