陽のあたる場所へ


でも…その代わりに、兄の卓也(タクヤ)が相手をしてくれた。
7歳年上の高校生の兄が、父親と同時にできたのだ。

進学校に通う兄は、勉強の息抜きとか言って、たまにキャッチボールの相手をしてくれた。

勿論、しょっちゅうという訳には行かないし、母から「体があまり丈夫でないらしいから、サッカーなんかは絶対に付き合わせちゃダメよ」
と念を押されていた。
心臓に軽い疾患があり、激しいスポーツは禁止されていたらしい。

「キャッチャーミットの代わりくらいしかできないけど…」

なんて笑いながら相手をしてくれる兄が、とても好きだった。

一緒にゲームをしたり、俺が中学生になってからは、試験前に勉強を教えてくれたりもした。

思い描いていた夢とは少し違ったけど、俺は幸せだと感じていたんだ。





俺の知らない秘密が何もかも一気に暴露され、そんな幸せが一瞬にして崩れてしまったあの日‥‥




俺は、21歳の大学三年生になっていた。

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