陽のあたる場所へ
情事が終わり、幸せそうな表情で俺の胸に顔を埋める彼女の隣で、俺は急に不安になった。
これからどうなるんだ?…
本当に兄に恋人が出来て、二人の間が冷め切っているのなら、問題はないのだろうか…
だけど、そもそも、あの優しく真面目な兄が、平然と二股なんてかけられる性格だとは思えない。
絢音さんの気持ちが自分になくなったと感じて、逃げ道を作ろうとしたのだろうか…
それなら、兄はまだ彼女を愛していることになる。
俺は、とんでもないことをしてしまったのか?…
いつも可愛がってくれた優しい兄を、裏切ってしまったんだよな…?
「何 考えてるの?難しい顔して…」
絢音さんの温かい掌が、俺の頬を覆う。
押し寄せて来た後悔に心を支配されそうになったが、途端に幸せな気分が舞い戻り、俺は笑顔を浮かべた。
「龍司くんの柔らかいこの笑顔、好き」
絢音さんがそう言って嬉しそうに微笑むから、照れくさくなって、彼女の瞼にキスをした。
素肌のまま抱き合って温もりを感じ合っていた時、部屋のドアをノックする音がして、続いて聞こえた声に、俺達は凍りついた。