陽のあたる場所へ

「あのね、楓さん‥」

「おい!‥『さん』って…」

「いいのよ、私がそう呼んでって頼んだの」

沙織を窘めようとした龍司を、楓が制して話し始めた。

「先生って呼ばれる柄でもないしね、沙織ちゃんとは作家と担当者であって、友人でもあるの。

こんな仕事してるとね‥誰とも何も話さず、数日が過ぎることもある。
締め切りに追われてても、何も生まれて来なくて、ストレスが溜まる事もしょっちゅうで…

そんな時、沙織ちゃんは、私にいつも癒やしと元気をくれるのよ。
だから、沙織ちゃんとゆっくり話したくて、他社の仕事を片付けてから、最後に彼女を呼んでたの。

でも、それが沙織ちゃんの首を絞めてたのね。
ごめんなさい…
これからはちゃんと早めに上げるようにするわ。
だから、社長さん、担当変えないでね。
私、彼女が担当じゃなきゃ、書かないから」

全部、勝手に喋って仕切られてしまった。

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