陽のあたる場所へ
翔平は地元で就職が決まり、大学卒業を期に、そちらへ戻ることになった。
引っ越しの手伝いをして、「当日は見送りなど要らないからな」と言う翔平を、無理矢理見送ることにした。
「龍司、お前、もう本当に大丈夫か」
「あぁ、大丈夫だよ。いろいろ心配かけてごめん」
「もう俺ら、子どもじゃないしさ、どこでも自由に行き来できるんだからさ、何かあったら呼べよ」
「うん、ありがとう。またお前の炒飯、食いたくなったら呼ぶわ」
「はぁ?県外まで出前させるつもりか?まぁ、いいや、豚肉の生姜焼き付きで作ってやるよ」
「あぁ、その生姜焼きだけどさ、お前あれ、肉を切る発想ないの?美味いけど、食いづらいんだよな」
「え~?面倒くせぇじゃん。それにデカイ方がお得感ないか?ステーキみたいなさ」
「ねぇよ!……いや、あるかも」
「だろ?」
こんなくだらないことで笑い合えることも、これから暫くは、もうないのだろう。