陽のあたる場所へ
「坂口さん、そろそろ出発しますけど…」
引っ越し業者の人の良さそうなお兄さんが、翔平に声をかける。
「あ、はい。すいません」
翔平はその人に向かい頭を下げると、俺に向き直り、今度は真剣な表情をして言った。
「龍司が親父さんの会社に入ることになるとは思ってなかったから驚いたけどさ…、ま、お前も思うところあってそれなりの決心した訳だろうから…。
時間かかるかも知んないけどさ、親父さんと、叔母さんとも、またうまくやれるようになるといいな」
途端に顔が引き吊ってしまう。
翔平とは、素直に思ったことを言ったり、軽口叩けても、きっとそれは無理だ。
それでも、翔平にはこれ以上心配かけたくなくて、心を隠して笑って見せた。
「そうだな…ありがとな」
「じゃあ…、またな」
翔平が助手席に乗り込んで、ドアをバタンと閉めると、トラックは動き始めた。