陽のあたる場所へ


正直、翔平が居なくなってしまうことが、本気で、心の底から、淋しくてたまらなかった。

高校のクラスメイトや部活仲間、大学の学部やゼミ仲間、他にも友達は居たが、真実を話したのは翔平だけで、ここまで心を開ける友人はいなかった。

事実上、家族をなくしたも同然だと思っていた俺にとっては、翔平自身が、そして彼に居候させて貰っていたこの部屋が、自分のままで居られる唯一癒される場所だった。
今日を境にそれを無くしてしまうのだ。



小5の春、引っ越しをした後で、翔平が電話をかけて来た時、一人では恥ずかしかったのか、電話口の向こうにはクラスの友達が数人一緒に居て、みんなで交代しながら話した。

その時、同級生の山下が言っていた。

「引っ越しの時、翔平さぁ、龍司の乗った車が見えなくなったら、すっげえ泣き出してさ、俺らが一生懸命慰めても、全然泣き止まなかったんだぜ」

「こら、山下、余計なこと言うんじゃない!龍司、そんな話、嘘だからな~!」

あの時、翔平は、そう言って受話器を取り上げて慌てていたっけな…
ふと、そんな昔の話を思い出す。

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