陽のあたる場所へ
何でも「沙織が担当を外されるかも知れない」と考えた光里が、先回りして社長が行く理由を電話しておいてくれたらしい。
龍司が支社からかかって来た電話を受けている間に、楓が沙織にこっそり耳打ちしてくれた。
「あんたでも役に立つことがあんだな‥
彼女に書いて貰えなくなるのは困る。これからも担当を続けてくれ」
龍司にそう言われて、とりあえず、首の皮が一枚繋がった気がした。
「それ持って帰って、すぐ校閲だ。
俺は少し寄る所があるから、帰りは夕方になると伝えてくれ。
何かあれば電話を」
龍司はそう言い残すと、タクシーに乗り込み、会社とは反対方面に走り去って行った。