陽のあたる場所へ
この悲劇を招いたのは、母が良かれと思い父から身を引いたことから始まり、その意思を最後まで貫けなかったのが原因だ。
父は父で、自分のことで、俺の母、兄の母、二人を苦しめた自分を責めた。
そして二人は、兄の母を死に追い込み、兄も悲しませてしまった罰として、二度と会わないことを決意した。
父は、〝一生、俺に父親だと名乗らないこと〟
それが、兄や、兄の母に対しての、せめてもの懺悔だと…。
これからは別々の場所で、他人として生きて行くことを誓い、二人は二度目の別れをした。
ただ、女手ひとつで俺を育て、生活して行かなければならない母を気遣い、父は養育費だけは払わせてくれと申し出たんだ。
毎月、母の口座に振り込まれる、養育費としては多額なお金。
顔を合わせてないとは言え、いつまでも援助して支えて貰っていては、けじめをつけたことにならないと思った母は、口座を解約して、俺を連れて引っ越した。
それから母は、正社員の仕事を見つけ、がむしゃらに働いた。帰りが夜になる日も度々あったが、淋しい思いはしたものの、いつもちゃんと俺の晩飯の用意だけはしてくれていたのを覚えてる。