陽のあたる場所へ
俺が生まれてから10年が経ち、父が俺達を探し出し、迎えに来た。
もっともその時の俺は、母の再婚相手になる知らないおじさんに初めて出会い、新しいお父さんができると、単純に喜んでいたのだが。
父は、母が姿を消し、探し出すまでの間、とにかく考え抜き、決心をしたのだそうだ。
そもそもこんな結果を招いたのは、最初に二人が別れてしまったことだ。
兄の母だって、自分と結婚しなければ、他の誰かと一緒になり、幸せな人生を送れたかも知れないのだ。
兄の母には申し訳ないことをしたが、亡くなった人はもう戻らない。
それなら、せめて、今、どこかで生きている愛する人達を幸せにしたいと…。
そんな想いを遂げる為に、俺達を探し、母を説得して、夫婦として、親子として、スタートしたいと決意したのだ。
但し、俺の出生の秘密を明かすことは、俺と兄にとっては、幸せをもたらさないどころか、ヒビさえ入ってしまうだろう。
本当なら、半分でも血を分けた兄弟なのだと伝えたいところだが、この場合、他人だと割りきった方が、お互いのためだ。
そう考え、兄の母への懺悔の想いと、俺達兄弟の為に、敢えてお互いの連れ子として家族になった。
兄は父によく似ていたが、幸い俺は母似だったので、周囲からも何も言われることはなかった。
俺に実の父親だと名乗らなかったのは、決して世間体とかそういう話ではなく、兄の母への償いと、俺達兄弟の心を守るためだったんだ。