陽のあたる場所へ
なのに俺は、そんな両親の想いも知らず、ただ自分が被害者だと思い込んで、二人を憎み、拒絶した。
拒絶しただけでは飽きたらないかのように、卑劣な形で追い込み、傷を負わせた姿を見ても、手を差しのべることさえしなかった。
俺は…こんな復讐がしたかったのか?!
‥‥‥違う、違うのに…。
元々、俺が生まれたりしなければ、みんな苦しまずに済んだんだ」
淡々と話し続けていた龍司だったが、突然、喉元が震えてクッと声が漏れると、伏せられた睫毛を濡らして涙が零れた。
拳を握り締めて、泣き顔を隠しながら肩の震えを抑えようとしている龍司を、沙織はたまらず胸に抱き寄せた。
「我慢しないで下さい。
ずっと一人で頑張って来たんですものね…
誰かの前で泣いたっていいじゃないですか。
それに私、思うんです…。
社長のご両親の間には、確かに紆余曲折あったけど、別れても結局は惹かれ合って、一緒になることを望んだ。
社長は、そんなお二人の元に生まれたんですよ。それって素敵なことじゃないですか。
生まれなければ良かった命なんかじゃない。
寧ろ、ご両親の愛の元に生まれた大切な命だったんじゃないですか?」
龍司の肩から力が抜け、抑えられていた感情が嗚咽に変わった。
「俺が…何よりも欲しかった家族だったのに…
血の繋がった本当の家族だったのに…。
父も、母も、兄も、そして兄の母も、みんな俺が傷つけて壊した…。
だから、みんな居なくなってしまった」
沙織は 龍司の背中を抱きしめ、体の震えを自分の掌に吸い取るように、ただ黙って撫で続けた。