陽のあたる場所へ


どのくらいの時間が経ったのか、少し落ち着きを取り戻した龍司は、沙織からゆっくり離れた。


「ごめん…。俺はこんな優しさをかけて貰う資格などない。
あんたには酷い事ばかりして来たんだ…」

「そんなこと、私は…」


「理由があるんだ…。酷く我が儘な理由。
最初の頃、俺が愛した人の、俺を見る目と、とても似てると思ったんだ。

好きでもないくせに、俺に身を任せたところも。
彼女も、海野さんも、俺を好きだとは一度も言わなかった。
それなのに、俺に抱かれた。

彼女の気持ちなんて全くわからないまま、結局は去って行った。
海野さんもきっと同じだ。
その時だけの関係…愛情なんて何もないと。


だから、傷つけたくなった…。
彼女と、貴女を重ね合わせていたんだ。

傷つけて、嫌われて、 自分の想いを終わらせたかった。

海野さんには何の関係もないことなのに…。
彼女と海野さんは、全く違う人なのに…。
本当に申し訳ないと思ってる。
こんな話を長々として、言い訳をするつもりなんかじゃなかったんだけど…」

< 195 / 237 >

この作品をシェア

pagetop