陽のあたる場所へ
さっきの電話の女性の所に行くのかも知れない。
毎日が忙しい立場…いつ自宅に帰ってるんだろうと不思議に思う。
休日も取れているのかどうかもわからない。
僅かな時間でも、無理して撚り出さないと、恋人にも会えないだろう…。
勝手な想像をした後、エレベーターの中でのキスを思い出す。
…だったら何故あんなことを…
湧いて来た腹立たしさの感情を、訳のわからない切なさが追い越して行く。
胸をギュッと締め付けられるこの想いを、沙織はどう解釈していいのかわからずにいた。
取り敢えず今回だけは、龍司から少しだけ認めて貰える言葉を貰えた。
光里が気を利かせてくれたお陰だ。
今度、食事でも奢らなきゃ…
沙織は頭を振って雑念を振り払い、楓から受け取った原稿の封筒を強く胸に抱いた。